たかとよ 48号

タレントの大欠保佳代子さんは、幼い頃から大人になるまでほとんど風邪をひかずに過ごしたそうです。その理由について、本人はこう語っています。「私は、小さい頃、おじいちゃんの畑仕事のお手伝いをしながら、汚れた手でおやつを食べたり、道端に生えている植物を食べたりしていました。その経験が免疫力を高め、じょうぶな身体にしてくれました。」

また次のような話を聞いたことがあります。「赤ちゃんはハイハイをしながら手あたりしだいにいろいろな物を紙めます。汚く思えるこの行動も、実は赤ちやんの免疫力を高める要因になっています。」

これらの話は、きれいすぎる無菌状態の環境よりも、自然の中で、適度に菌とつき合ったり戦ったりしながら生活することが、免疫力を高め、身体を強くするのだということを教えてくれています。

そして、これは身体だけでなく、人生にもあてはまるのではないかと私は思います。

哲学者ルソーは、その著書『エミール』の中で、こう言っています。「あれしなさい、これしなさい。あれするな。これするな。そんなことばかり言っていたら、子どもたちはそのうち、『息をしなさい』と言わないと呼吸さえしなくなるぞ。」

よかれと思って行う子どもたちへの口出しや手出しが、実は、子どもから経験するチャンスをうばい、生活の場をあたかも無菌室のようにしてしまっているのではないかっそして、それが子どもたちの生きる力の低下につながってしまう。このルソーの言葉は、そんな危険性について警鐘を鳴らしています。

本校は、「すべての教育活動は、生徒の自己肯定感向上のために~学校を「活躍の場」「認められる場」「安心できる場」に~を合言葉に、教育活動を行ってきました。

学校を、安心してチャレンジできる場にし、たくさんの経験を積ませること。成功だけでなく、ときには失敗をする経験も大切。その中で味わった、喜び、うれしさ、悔しさ、苦しさ等のさまざまな心の動きこそが、人生の免疫力を高め、未来に向かって力強く成長していく力になる。そんな思いで、教育活動を進めてまいりました。

この一年間、授業や行事、部活動等での生徒たちのいきいきとした姿にたくさんの感動をもらいました。生徒たちの笑顔や真顔を見ると、さまざまな活動の中で、たくさんの心の動きを経験し、人生の免疫力を高めてくれたのではないかと思っています。こうした活動を進めることができたのも、保護者や地域の皆様のおかげです。不十分な点もあったかと思いますが、本校の教育活動をあたたかく見守り、ご理解・ご協力くださり、本当にありがとうございました。今後も、生徒の成長につながる豊かな教育活動を創りあげていきたいと考えています。

人生の免疫力 校長 小久保 憲司

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